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こつそりとのばした誘惑の手を
僕に気づかれ
死は
その手をひつこめて逃げた

そのとき
死は
慌てて何か忘れものをした
たしかに何か僕のなかに置き忘れて行つた




高見順 詩集/樹木派

青をめざして

青をめざして


たゞ目の前のシグナルを
青のシグナルを見つめて
脇見をしないで
歩いた
どこへ行くのか考えたことも
なかった
青をみつめて
青だけをみつめて
わたしは歩いていった

どこが悪かったのだ
みんなどこへ消えたのだ




杉山平一 詩集/青をめざして


歩く

歩く


何かゞ欲しい
その何かゞわからない

ニコチンを入れてみる
音楽を入れてみる
答えは出てこない

人の微笑でもなかった
夕空に輝きそめる星でもなかった

振子のように足をうごかして
たゞ僕はあるいている




詩集 杉山平一/ぜぴゅろす


純粋

純粋



世の中は
くらく 濁って
(それはそれでよいのだが)
僕の前の卓子の上
コップに水は澄み透っている

それを身体に入れて
もう一ぺん 僕は立ち上がる




杉山平一 詩集/ぜぴゅろす


小鳥

小鳥



また子供の命日がめぐってきた
父と母は山の墓へ行った

あ きれいな小鳥だこと
なんの鳥でしょう
墓の上の樹の枝を指して
おがみ終った母はいった

うすいブルーの小鳥がくびを傾むけ
うつむき横むき そうして去った

山を下りながら父はいった コーちゃん
会いにきてくれたね 生れかわって

母は返事をしない
あたりの山はシーンとなって




杉山平一 詩集/ぜぴゅろす

微笑

微笑



子供の死ぬ前の日は
珍らしく大雪だった

病院の窓から見える竹が
雪をはねあげたのを見て
子供は微笑した

子供が私たちにのこした
かずかずの笑いのなかの

それは最後の微笑だった

雪を見て それから私の目を見て
おどけてみせて。




杉山平一 詩集/ぜぴゅろす


晩餐

晩餐



ちいさな行楽の帰りであろう。駅裏の屋台からはみ出した細長い床几をテーブルがわりに、粗末な服装の親子四人がしゃがんでラーメンをたべていた。父親はたべ終って、ぼんやり遠くを見ていた。母親は幼な子の口に、そばを入れてやっており、姉はたべながら、おいしいネという目で母親を見あげていた、もう風の冷たくなりはじめた夕方。




杉山平一 詩集/ぜぴゅろす


不在

不在



お隣りは 遠くへ
引越して行ったのに

シーンとした空家にむかって
幼ない女の子が呼びかけている

きいくちゃーん
あーそおびましょおおー

ゆるやかに うたうように
信ずるものゝ澄みきった声で




杉山平一 詩集/ぜぴゅろす


出合い

出合い



砂のトンネルを
掘っていって
暗い穴の行きつまりが
不意にくずれて
キラリとさしこむ
光のなかに
手と手がふれあった
そんな出合いだった
きみとわたし




杉山平一 詩集/ぜぴゅろす






ものをとりに部屋へ入って
何をとりにきたか忘れて
もどることがある
もどる途中でハタと
思い出すことがあるが
そのときはすばらしい

身体がさきにこの世へ出てきてしまったのである
その用事は何であったか
いつの日か思い当るときのある人は
幸福である

思い出せぬまゝ
僕はすごすごあの世へもどる




杉山平一 詩集/ぜぴゅろす


プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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