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閉された部屋

閉された部屋



子供がゐなくなつてさびしい

家路を人がいそぐのは
そこに食事と子供の愛があるからである

その子供の灯は消えてしまつた
それは真夏の朝のことだつた
いまは秋の虫が鳴いてゐる

屍をやいた黒い煙はまつすぐ
たれこめた雨雲の間に吸はれて行つた
子供は灰となつてこの空に漂つてゐるだらう
その片言はわれら夫婦の胸にのこつてゐる

けれども彼に会ふことはできない
彼はどこへ行つたのか
どこへ出て行つたのか

人生は閉された部屋のやうである
出口ははじめからないのだ
人はさまよひもだえあせるのである

私は壁を戸のやうにたたき
頭を身体をぶつつけてはあきらめ涙を流す
子供はどこへ行つたか どこから出たか
人間が考へる葦であり
考へる故に偉大であつたとしても
この人生を超え得たと考へ得たとしても

遂に考へは錯覚でありなぐさめであり
どうにもできず われらはこの部屋に閉されてゐる
どうにもならぬことを思つて私はただもだえる

おお出口のない人生――戸をあけて下さい




杉山平一 詩集/声を限りに


プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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