スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

送行

送行



安田末吉は三十五才。
株屋の店員から
徴用工―応召。
この飛躍は
米軍マーシャルに迫る
緊迫と軌を同じうする。
ゆく者は生還を期すにあらず。
しかも送行三十里の車中は
なごやかな談笑にすぎた。

暮れなずむ印旛沼は
しろく冬ぞらをうつし
兵舎町の駅のホームに立って
君は手をあげた。

君をおいてわれわれは走り去った。
松山や
麦畑や
なだらかな丘の勾配や
雑木林や
冬枯れ乾いた風景を送って
電車は灯のない東京の街にかえった。

家のなかはひっそりとした団欒であった。
母と妻と七才の娘と
明日からこのさびしさに親しむだろう。
               (昭和十九年)




秋山清 詩集/白い花

プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

アナログ時計(黒)

金魚

FC2カウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。