2015/02/04 平和のはなし 平和のはなし平和がほしい 平和をちょうだい!不器量な娘が青年にいう明日の帰りに買って来て わたしを愛しているならばお父さんの酒乱がなおりわたしたちがいっしょになれるぐらいの一番小さなものでいい!青年はおずおず 頭の中で計算するどこに売っているだろう? 金足りるかな?まあ探してみるか ともだちにでも聞いて・・・平和をよこせ 平和を買おう!貧しい青年が月賦販売店にいう十カ月払いで平和をくれたまえ!最新式の新婚むきのやつを!目をまるくした店員は ひそひそやっと現れた支配人がいったあいにく平和はこのところ品薄で・・・すぐとりよせますですが その代わり新型マットレス ゴルフズボン絶対遅刻しない目覚し時計ではいかが?平和を早く 平和を送れ!金繰り苦しい支配人は問屋にいういろんな形式とり揃え 大量にだ!おまえのところは大体誠意がないよ電話代はそっちにつけたからねすると とつぜん くらやみのなかから平和がやって来た あいさつぬきで泥と血にまみれ重い袋を背負い傷だらけの手をひろげて割れた唇で息を吐いた そしていったさあ 代ってこの袋を背負いたまえそしてぼくには 一杯の冷たい水を飲ませてくれよ三木卓 詩集/東京午前三時
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