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伊藤悦太郎

伊藤悦太郎



昭和十九年七月
伊藤悦太郎は応召した。
やがて生まれる私の子供へ祝福の言葉を残して。

感傷の胸襟をひらかず
儀礼のかけらもなく
毒舌をかわして十余年。

妻子をいつくしみ
書物をよみ
言辞すくなきにあらず
多きにもあらず。
かつて悲歎をみせず
世の思潮流行に赴かず。
下層に生きて時に慷慨すれど
爽涼、市井野人の風格を失わぬ。

風のたよりにきく
いま、比島にあると。

レイテ、ミンドロの敵上陸。
スール海、リンガエン沖の機動艦隊。
せまる決戦のときをまって
彼は何をしているだろう。

夜々の警報下、満点の星ぞらに
目を放てば
オリオンは西にかたむき
思いをはるかにする。
             (昭和二十年)



秋山清 詩集/白い花

プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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