2015/02/06 あくびの子ども あくびの子どもだまって通る人を見あげ見おくっている。この六つくらいの子どもをぼくは自分の幼い子とくらべた。しろい肩がみえメリヤスのシャツがやぶれている。板きれをしいてズボンに下駄ばきのひざをだき、ちいさな紙箱と横にボール紙に「私ノ父ハ軍属トナッテ――」と、六、七行かいてある。止まる人も読む人もない。地下鉄からでてくる段々の中途で人の足をとめるにはわるい場所だ。いま出てきた人がひととおり途だえたとき。両手をつきあげて子どもは大きなあくびをしてちょうどふりかえったぼくをみて、にこっとした。秋山清 詩集/象のはなし