2015/01/02 敵について 敵について私の敵はどこにいるの? 君の敵はそれです 君の敵はあれです 君の敵はまちがいなくこれです ぼくらの皆の敵はあなたの敵でもあるのですああその答のさわやかさ 明解さ あなたはまだわからないのですか あなたはまだ本当の生活者じゃない あなたは見れども見えずの口ですよあるいはそうかもしれない敵は・・・・・・ 敵は昔のように鎧かぶとで一騎 おどり出てくるものじゃない 現代では計算尺や高等数学やデータを 駆使して算出されるものなのですでもなんだかその敵は私をふるいたたせない組みついたらまたただのオトリだったりして味方だったりして・・・・・・そんな心配が なまけもの なまけもの なまけもの 君は生涯敵に会えない 君は生涯生きることがないいいえ私は探しているの 私の敵を 敵は探すものじゃない ひしひしとぼくらを取りかこんでいるものいいえ私は待っているの 私の敵を 敵は待つものじゃない 日々にぼくらを侵すものいいえ邂逅の瞬間がある!私の爪も歯も耳も手足も髪も逆だって敵! と叫ぶことのできる私の敵! と叫ぶことのできるひとつの出会いがきっと ある茨木のり子 詩集/「見えない配達夫」