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陽を浴びて

陽をあびて



冬の朝
通勤時間帯を過ぎた郊外電車の駅
人影まばらな長いホームの
屋根のないところで
やわらかな陽を浴び
私は電車を待っていた

ひととき
食と性とにかかわりのない時間
消費も生産もせず
何ものかに軽く突き放されていた時間

何ものか
私を遥かな過去から今に送り出してきたもの
無機質から生命への長い道程
生命の維持のための執拗な営み
信じがたいほど緻密で
ひたむきでひたすらであった筈の意志

その意志の檻に収監されたまま
私は、そのとき
ひたむきでもなく
ひたすらでもなく
食と性との軛を思い
ぼんやり
冬の陽を浴びていた
逸脱など許す筈のない意志が
見てみぬふりをしているらしい、ほんのひととき
あり余るやわらかな光を
私は私自身に、存分に振舞っていた
ホームで
電車を待ちながら




吉野弘/詩集「陽を浴びて」

プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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