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夕日のなかで

夕日のなかで



この夕日のなか
やさしく くずれかけていく町
ぼくは 死んだ兵士たちの記録を読んだ
きんいろのひかりをあび
逆光の幼児たちが駆けていく
きっと その日も こんな日々だった
幼いぼくが 夕日のなかで
おどろいて立ちすくんでいたころ
かれらは 輸送船団にだまって乗り組んだ そして
たくさんのひとごろしをしてから 殺されたのだ
すると どこかで公報を握らされた女が
のぞみを失って 仏壇のまえで泪をながし
幼児が縁側の切干しの芋をいじっている
それが ぼくのともだちのひとりだ
ぼくらは だから
ひとごろしに行くまえに まじわった男のこども
ひとをころし終わってから まじわった男のこども
手あらいの水をあかく染めてから
マイ・ブルー・ヘヴンのステップを踏み
おそろしい目つきで 剣菱をがぶりと呑んだ
こうして生きのこった者は呪われ
こどもに正義を教えながら育てたのだ
おお この一世紀
じじいも ひいじじいも 力をあわせて
ひとごろしをしながら 正義をこどもに教えたのだ
かれらから生まれた
その金で買った ミルクを飲んだ ぼくら
また真に在るべき世界を見ることはできず
その直しかたを知らない
すでに ころしあいの焔のなかにあり
ぼくらも 虐み虐まれてきたからだ
すでに神の心より遠く むごい光をあび
一匹の獣の姿をさらしているからだ
だから 盲いたまま
妊婦の腹をくらい巻尺ではかり
やってくる者らのことを 熱い心で思う
世界を怨恨と偏見で撃つ
この夕日のなか
やさしく くずれかけていく町から




三木卓 詩集/「わがキディ・ランド」

プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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