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砲身

砲身



少年の日の夢であった戦艦陸奥が
海から引揚げられていた
かつて火蓋を切った双つの砲口から ドッと
海水が流れ出てきた

 あんな凄い涙は見たことがない

ある日 京都嵐山の美術館を訪ねると
その巨大な砲身が 屋根のない展示場に
飾られていたのだった
「戦艦陸奥の主砲、砲門をひらけば、弾丸は京都
大阪を越えて兵庫県宝塚の地に達する」と
そんな説明札に飾られて
しずかな砲口は
その日の鉛色の空を見上げていた。




杉山平一/詩集「木の間がくれ」

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理想

理想



思いを 高く
これみよがしに
頭上にかかげ
ふりかざしたまではいいが
それを まっすぐ
一直線に
ビューンと
投げおろしてきた

受ける私は痛くてつらい




杉山平一/詩集「木の間がくれ」

酔い

酔い



酔いはみじかい

空に高く投げたボールが
下降に転ずる前
フッと止って浮いている
あの一瞬なのだ。




杉山平一/詩集「木の間がくれ」

部屋

部屋



 会社のアパートになっている建物の傍を毎日通る。一つの部屋の大きな窓に、壁に貼ったお習字がいつも見える。天地とか、春秋という墨の字の上に、赤丸が渦巻のようにつけられている。
 ある七夕の日、その窓に小さな笹がさされ、青や赤の紙に、ひらがなで一杯ねがいごとが書かれていた。

 僕はあの部屋が好きだ。




杉山平一/詩集「木の間がくれ」

日曜の夕方

日曜の夕方


――ジュースものんだし
――ホットケーキモタベタシ
――おもちゃも買ったし
――ヨカッタネ
粗末な服の母と子が
手をとりあって
私を追い抜いてゆく




杉山平一/詩集「木の間がくれ」

電話

電話



だれも居ない部屋
しきりに電話が鳴つてゐる
あゝ このむなしい日日に
また何かゞあせつてゐる




杉山平一/詩集「夜学生」

別れ

別れ



僕等はもう言葉が途絶えてしまつた
きみはひとり
眼鏡をはづして
ゆつくり硝子をふいてゐた




杉山平一/詩集「夜学生」

帰途

帰途



夜の電車にのりこんできた
工場労務者
けさ 働く意志のつまつてゐた
その心の弁当箱はいまカラカラはずみ
帰りゆく夜の家庭を思ふ
幼な児らすでに寝入りたるや
鼻に汗にじませ
つぶらな瞳はいま席を求める
観劇帰りの人よ
立つて
席をゆづれ
明日 きみらがまだ床にあるとき
早くも冷い朝風をきつて仕事へいそぐ人に
立つて
席をゆづれ




杉山平一 詩集/「夜学生」

黒板

黒板



 自分は眼を閉ぢる まつ暗なその神の黒板を前にして 自分は熱心な生徒でありたい 何ごとも識り分けること尠く 生きることに対し またも自分は質問の手をあげる




杉山平一/詩集「夜学生」

プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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