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雅歌

雅歌
やさしいうた



とおいとおい野の果てに
一本の無花果の木が立っていて
そのまわりで
ものいわぬ隣人たちがあなたを呼んでいる
かえってこい!
かえってこい! ここには永遠も瞬間もない!
だが
人間は自分の生まれたところに戻ることができない

  あなたは何処から来たのか?
  あなたは何処にいるのか?
  そして
  あなたは何処へ行くのか?

とおいとおい沖のむこうに
ひとつの岩礁が突き立っていて
そのまわりで
眼の見えない隣人たちがあなたを招いている
走ってこい!
走ってこい! ここには憎しみも愛もない!
だが
人間は自分の終末の場所を知ることができない




木原孝一 / 未刊詩篇から




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ちいさな橋

ちいさな橋



生まれたその日から
そのことだけを習ってきた
この世界に橋を架ける できるだけ多く橋を架ける

朝の逆光線のなかで
私はビルとビルとの細い隙間に橋を架ける
目的もなく
かけあしで急ぐひとの 心と心の裂けめに橋を架ける
だが
引き裂かれた心と心のあいだは
もうだれの手にも届かない距離になっている

夕暮れの赤外線のなかで
私は過ぎゆく瞬間と来るべき瞬間に橋を架ける
理由もなく
うなだれて歩くひとの愛と憎しみのあいだに橋を架ける
そしていつかは
人間と人間とのあいだに 時と場所とのあいだに
どんな暴風雨にもこわれない橋が完成するのを夢みる

生まれたそのときから
このことだけを考えて生きてきた
この世界に橋を架ける できるだけ多くの橋を架ける




木原孝一/未刊詩篇から


プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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