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土地・家屋

土地・家屋



ひとつの場所に
一枚の紙を敷いた。

ケンリの上に家を建てた。

時は風のように吹きすぎ
地球は絶え間なく回転しつづけた。

不動産という名称はいい、

「手に入れました」
という表現も悪くない。

隣人はにっこり笑い
手の中の扉を押してはいって行った。

それっきりだった
あかるい灯がともり
夜更けて消えた。

ほんとうに不動なものが
彼らを迎え入れたのだ。

どんなに安心したことだろう。




石垣りん 詩集「表札など」

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鳥よ
おまえは
羽があるために
そのことで戸惑うことは
ないか?
ないだろうな
だから
羽があるのだろうな



川崎洋 詩集/「海を思わないとき」

陽を浴びて

陽をあびて



冬の朝
通勤時間帯を過ぎた郊外電車の駅
人影まばらな長いホームの
屋根のないところで
やわらかな陽を浴び
私は電車を待っていた

ひととき
食と性とにかかわりのない時間
消費も生産もせず
何ものかに軽く突き放されていた時間

何ものか
私を遥かな過去から今に送り出してきたもの
無機質から生命への長い道程
生命の維持のための執拗な営み
信じがたいほど緻密で
ひたむきでひたすらであった筈の意志

その意志の檻に収監されたまま
私は、そのとき
ひたむきでもなく
ひたすらでもなく
食と性との軛を思い
ぼんやり
冬の陽を浴びていた
逸脱など許す筈のない意志が
見てみぬふりをしているらしい、ほんのひととき
あり余るやわらかな光を
私は私自身に、存分に振舞っていた
ホームで
電車を待ちながら




吉野弘/詩集「陽を浴びて」

プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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