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平和のはなし

平和のはなし



平和がほしい 平和をちょうだい!
不器量な娘が青年にいう
明日の帰りに買って来て わたしを愛しているならば
お父さんの酒乱がなおり
わたしたちがいっしょになれるぐらいの
一番小さなものでいい!
青年はおずおず 頭の中で計算する
どこに売っているだろう? 金足りるかな?
まあ探してみるか ともだちにでも聞いて・・・

平和をよこせ 平和を買おう!
貧しい青年が月賦販売店にいう
十カ月払いで平和をくれたまえ!
最新式の新婚むきのやつを!
目をまるくした店員は ひそひそ
やっと現れた支配人がいった
あいにく平和はこのところ品薄で・・・
すぐとりよせますですが その代わり
新型マットレス ゴルフズボン
絶対遅刻しない目覚し時計ではいかが?

平和を早く 平和を送れ!
金繰り苦しい支配人は問屋にいう
いろんな形式とり揃え 大量にだ!
おまえのところは大体誠意がないよ
電話代はそっちにつけたからね
すると とつぜん くらやみのなかから
平和がやって来た あいさつぬきで
泥と血にまみれ重い袋を背負い
傷だらけの手をひろげて
割れた唇で息を吐いた そしていった
さあ 代ってこの袋を背負いたまえ
そしてぼくには 一杯の冷たい水を
飲ませてくれよ




三木卓 詩集/東京午前三時

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夕日のなかで

夕日のなかで



この夕日のなか
やさしく くずれかけていく町
ぼくは 死んだ兵士たちの記録を読んだ
きんいろのひかりをあび
逆光の幼児たちが駆けていく
きっと その日も こんな日々だった
幼いぼくが 夕日のなかで
おどろいて立ちすくんでいたころ
かれらは 輸送船団にだまって乗り組んだ そして
たくさんのひとごろしをしてから 殺されたのだ
すると どこかで公報を握らされた女が
のぞみを失って 仏壇のまえで泪をながし
幼児が縁側の切干しの芋をいじっている
それが ぼくのともだちのひとりだ
ぼくらは だから
ひとごろしに行くまえに まじわった男のこども
ひとをころし終わってから まじわった男のこども
手あらいの水をあかく染めてから
マイ・ブルー・ヘヴンのステップを踏み
おそろしい目つきで 剣菱をがぶりと呑んだ
こうして生きのこった者は呪われ
こどもに正義を教えながら育てたのだ
おお この一世紀
じじいも ひいじじいも 力をあわせて
ひとごろしをしながら 正義をこどもに教えたのだ
かれらから生まれた
その金で買った ミルクを飲んだ ぼくら
また真に在るべき世界を見ることはできず
その直しかたを知らない
すでに ころしあいの焔のなかにあり
ぼくらも 虐み虐まれてきたからだ
すでに神の心より遠く むごい光をあび
一匹の獣の姿をさらしているからだ
だから 盲いたまま
妊婦の腹をくらい巻尺ではかり
やってくる者らのことを 熱い心で思う
世界を怨恨と偏見で撃つ
この夕日のなか
やさしく くずれかけていく町から




三木卓 詩集/「わがキディ・ランド」

なぜ

なぜ



なぜ ぼくらはスピッツをかわいがり
目やにのでた 捨て猫をきらうのだろう?

なぜ 九郎判官の悲しい運命に同情し
目前の事件にかかりあうのをこわがるのだろう?

なぜ 総理大臣は郷土の英雄で
逃げ帰った犯人は 村の恥なのだろう?

なぜ 水着のわかい女が好きで 好きで
八人の餓鬼連れのかみさんはいやなんだろう?

なぜ 巨人と大鵬のファンで
ダウンする四回戦ボーイがおかしいのだろう?

なぜ ぼくらの世界の愛し方は
こうなってるんだろう?




三木卓 詩集/「わがキディ・ランド」

イエスタディ

イエスタディ



リヴァプールからの
四人の若者 吟遊詩人
詰めかけた警官にむかい 歌をうたう
ああと うめいた娘たち
ハンケチ握り キイという
リンゴはスタア
スタアキング!
ペートルとは何ものだ?
えて公の音楽じゃ……
勲章をもらっているから 芸術家だよ
だが四人の若者 吟遊詩人
としよりなんざ どうでもよい
好きな作曲家? レノンです はい
聞きたい人は レコード買ってね……
とり残されたは 娘たち
涙ふきふき 固く誓う
たとえこの身は おばあに なりましょうと
かれらを愛し続けるわ 一生よ




三木卓 詩集/「わがキディ・ランド」

プロフィール

梅田慈将

Author:梅田慈将
ただ生きているということは、生きる、ということではない。そのままそこで死んでいるような、つまらない男です。

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